妊娠率を上げるための取組み

1.  HFU検査

子宮鏡(H)、選択卵管通色素検査(F)、腹部超音波検査(U)この3つの検査項目の頭文字をとって「HFU検査」と称します。
子宮内にカメラを入れて、子宮内をきれいに洗浄したり、卵管に医療用の色素を入れて、その様子をお腹の上から超音波検査で確認するという検査です。

HFU検査の操作は複雑であり、実施には熟練した技術と豊富な経験が必要です。
当院には、日本産科婦人科内視鏡学会が認定する子宮鏡技術認定医が在籍しておりHFU検査を得意としています。
日本麻酔学会が認定する麻酔指導医も在籍しており、検査の痛みをしっかりと取り除いた無痛検査を実施しています。

HFU検査で分かること。

  1. 子宮鏡検査で子宮内悪性腫瘍の早期発見ができます。
  2. 子宮内膜ポリープ、子宮粘膜下筋腫、慢性子宮内炎など着床障害の因子を発見できます。
  3. 選択卵管通色素検査は極細カテーテルを卵管に挿入し、色素を注入することにより、卵管の疎通性(通過性)の把握できます。
  4. 卵管間質部の狭窄や閉塞を認めれば卵管形成術の実施も可能です。
  5. 子宮鏡‐選択卵管通色素検査を実施しと当時に腹部超音波で子宮、卵管、卵巣の状態をより詳しく確認できます。

** 要注意。似て非なる検査があります
HFU検査と似ている検査として、子宮卵管造影(HSG)という検査があります。
子宮卵管造影(HSG)という検査は、簡単にできるため普及していますが、HFU検査よりも安全性と治療性は劣ります。

2つの検査を比較すると次のような違いがあります。

子宮卵管造影(HSG) HFU検査
子宮の負担が大きい 子宮の負担が大きい
子宮内の汚れを卵管に流してしまうリスクある 子宮内の汚れを卵管に流してしまうリスク無い
人工的に子宮内膜症を作ってしまうリスクある 人工的に子宮内膜症を作ってしまうリスク少ない
造影剤のアレルギーのリスクある(最悪の場合は死亡)、放射線の被ばくがある 造影剤のアレルギーのリスク無い、放射線の被ばく無い。

HFU検査には、子宮卵管造影(HSG)の上記デメリットが一切なく、当院では安全性の高い、このHFU検査を採用しています。

2.  希望に応じFSP(卵管内人工授精)も実施します。

濃縮した精液を子宮内に注入する一般的な人工授精では、受精する場所である卵管まで、精子が自力で泳いで上っていく必要があります。
女性側で精子の動きを鈍くしてしまう抗体が作られている場合は、精子が卵管まで辿り着きにくくなり、その分、卵子と出合って受精する可能性も低くなります。精子の運動能がもともと低い場合も同様です。
このように、子宮内への人工授精より、卵管に直接精子を注入した方が卵子と精子が出会う確率が高くなるため妊娠率の上昇が期待できます。

一般不妊治療の段階で、ご希望に応じ1−2回FSP受けることが可能です。
子宮鏡専門医が実施しますので、安全かつ妊娠率が高い治療方法です。

3.  TVOI(多嚢胞性卵巣症候群に対する超音波ガイド下での経腟小卵胞穿刺術)

「多嚢胞性卵巣症候群」は未だ原因が明確ではなく治療についても難治性で、排卵誘発治療では副作用が発生しやすいなど、その管理や治療が難しい疾患であります。最近の論文ではTVOI術が排卵率を高めるとの報告もあります。腹腔鏡下多嚢胞性卵巣焼灼・多孔術(LOD)と比較すると、腹腔鏡が不要でお腹に傷が付かない、全身麻酔が不要、日帰りも可能ですので、患者様のご負担は、LODよりも遥かに少ないです。

ご希望があれば、当院で実施可能であり、TVOIを受けた直後に人工授精が可能ですので、その周期にも自然妊娠可能です。

4.  卵管鏡下卵管形成術(FT)

選択的卵管通水検査で卵管の「間質部」の狭窄及び閉塞の形成術は可能ですが、卵管の「峡部」と呼ばれる場所の形成術は難しいです。この場合、卵管鏡下の卵管形成術(FT)が行われます。
他院で「体外受精でしか子供ができない」と断言されても、当院のFT手術で自然妊娠が可能になるケースがよくあります。

過去に子宮卵管造影検査で「通っている」と診断された方でも、なかなか自然妊娠できない場合があり、以前の画像を再分析してみると、通常より卵管が細い場合や部分的に閉塞されている場合も数多くありました。そのような方にも、FT手術を提案し、自然妊娠を目指します。

5.   妊孕性温存のための子宮鏡下子宮粘膜下筋腫切除術

子宮粘膜下筋腫がある方は過多月経、貧血症になりやすいし、着床障害(受精卵が子宮内膜に生着しにくい)の原因にもなります。

一般的な子宮鏡下での切除術では子宮内膜ごと根こそぎ削って直接的に筋腫を切除しますが、当院の手術方法は子宮内膜を温存したまま筋腫のみを切除します。非常に繊細な技術を要しますが、子宮内膜を削らずに温存すれば、受精卵の着床がしやすくなり、妊娠率の向上が期待できます。

6.  内膜スクラッチ

着床の前人為的に子宮内膜に非常に小さな傷をつける方法です。
子宮内膜に傷をつけると、子宮内膜の修復過程でインターロイキンなどのサイトカインを分泌します。これらのサイトカインは着床の促進と免疫応答の正常化に寄与すると多くの論文で報告されています。

基本的に、高度不妊治療の胚移植の段階で実施する治療法ですが、当院では、ご希望があれば一般不妊治療の段階でも実施可能です。子宮鏡検査の時についでに実施することも可能です。

ここまでの説明通り、複数治療方法を併用することにより、当院実施の高度不妊治療(ART)は高い成功率を維持しています。

一貫性のある治療が必要のため、他院で高度不妊治療(ART)を受けながら当院での上記治療を受けることは基本的に出来ませんので予めご了承ください。

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