大阪大の研究チームは、卵子を受精させる精子の能力に関わる遺伝子をマウスの実験で見つけたと発表した。精子が卵子に入る際に働くとみられる。人間でもこの遺伝子が確認されており、その働きが特定できれば、男性不妊の診断や治療に役立つ可能性がある。論文が26日、科学誌に掲載された。
6組に1組が不妊に悩む中、その半数は男性側に原因があるとされる。チームは男性不妊の原因に迫ろうと、精子が卵子に入る時に先端を覆う「先体」が破れる現象に着目。先体に関係がありそうな遺伝子を絞り込み、それぞれを取り除いたマウスで実験を重ねた。
その結果、特定の遺伝子を失った精子では形状や運動機能は正常なのに、先体が破れなくなっていることを確認。この精子は卵子の近くにたどり着いても中に入ることができなかった。人間にも同じ遺伝子があることが確認されている。
チームの伊川正人教授は「先体が破れていない精子でも、卵子の中に人工的に入れれば、受精は可能だ。研究が進めば、不妊治療を効率的に行えるようになるかもしれない」と話す。
小林俊寛・東京大特任准教授(発生工学)の話「マウスと人間では、同じ遺伝子があっても働きが異なることはある。今後の研究で共通した働きが明らかになれば、治療薬の開発につながる可能性がある」