* 前書き *
「不妊」とは、妊娠・出産を希望しているにも関わらず一定期間、妊娠の兆候が見れない状態を言います。日本産科婦人科学会では、この「一定期間」を「1年というのが一般的である」と定義しています。
不妊治療はそれほど珍しい医療行為ではありません、現在不妊のカップルは10組に1組と言われています。不妊症の治療方法は様々です、私たちは、不妊症でお悩みのご夫婦の状況(年齢、不妊期間、過去の治療歴、仕事や生活パタン、不妊の原因など)に合わせて、最適な治療方法をご提案いたします。そのため、治療の流れは患者様お一人お一人で異なります。例えば、年齢が40歳を大きく超えている場合や、精子が非常に少なくタイミング法や人工授精での妊娠は困難である場合などは、タイミング法から人工授精→体外受精、とステップアップするのではなく、早期から体外受精に入る場合もあります。
1. タイミング法
妊娠しやすいと言われる排卵日の2日前から排卵日までに性交のタイミングを合わせる方法。卵胞の大きさや尿中のホルモンを測定し、排卵日を推定します。排卵日の周辺で数回の通院が必要です。
6回以上で妊娠しなければ、その後の妊娠率は停滞するため目安は6回です。<当院での実例|タイミング療法>
当院のタイミング療法で妊娠成立しています。
「最も妊娠しやすいタイミングに性交渉をする」そのタイミングを指導するタイミング療法はもっとも自然な妊娠に近く、妊娠を望んでいるお二人にとって最も負担の少ない不妊治療のファーストチョイスです。
当院でも積極的に基礎体温、超音波検査、尿中LH検査などを参考にしながら排卵日を予測し、効果的な性交渉のタイミングをアドバイスします。
今回の妊娠の方も内服一切なしでタイミング療法で自然妊娠に至りました。
2. 人工授精
採取した精液中から動きのよい精子(運動良好精子)を取り出して濃縮し、妊娠しやすいタイミングで子宮内に直接注入する方法で、妊娠成立のプロセスは自然妊娠と同じであります。精子が少ない、運動率が悪い、フーナーテストが不良である、性交障害がある等の場合に適応となります。人工授精の妊娠率は女性の年齢や精子の状態により大きく異なりますが、1回あたり約10%と言われています。(『生殖医療の必修知識』日本生殖医学会より)
なお、一般不妊治療には、排卵誘発薬(内服薬、注射)で卵巣を刺激して、排卵を起こさせる薬物療法、子宮内膜症などに対する外科療法も含まれます。
3. 体外受精・顕微授精
自然妊娠では、卵巣から排卵した卵子が卵管に取り込まれ、射精された精子が子宮から卵管に入ってきて卵管内で卵子と精子が出会って受精します。出来上がった受精卵は細胞分裂を繰り返しながら子宮に運ばれ、子宮内膜に着床して妊娠が成立します。
体外受精は、卵管内での卵子と精子が出会っていない、あるいは、出会っているけれど受精しない方に対して、体外で受精卵を作るという方法です。
具体的には、排卵誘発剤を使って卵胞を育て、経腟超音波で卵子が入っている卵胞を写しだし、卵胞を針で刺して中に入っている卵子を吸引して取り出し、体外で精子と受精させ(体外受精)、受精卵を培養し、子宮に戻します(胚移植)。体外受精が開発された当初は、卵管が詰まっていたりして卵子と精子が出会うことが出来ない場合に行われていましたが、その後精子が少なかったり運動率が悪い場合や、子宮内膜症がある場合、精子に対する抗体が出来てしまっている場合、原因不明の不妊症、高年齢女性、卵子の数が減ってしまっている場合、などにも用いられるようになってきました。